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2013年度 第3席受賞

『企業のパフォーマンスを高めるために ~調和のもとで発揮される適応力~』
経営リソース統括部 総務部 三輪 樹生

先日、京都の高校生が陸上競技の100m走で日本歴代2位にあたる10秒01というタイムを出して、世間の注目を浴びた。他にも、サッカー日本代表がワールドカップ出場を決定させたり、男子テニス選手が日本人歴代最高のランキング11位になったりと、スポーツにおいて日本人が世界に通用する高いパフォーマンスを発揮している。

一方、日本の企業はどうだろうか。日本企業は技術力が高く、今や世界中に大きな影響を与えている。アスリートにおけるパフォーマンスの指標が速いタイムや高い順位であるように、企業におけるパフォーマンスの指標として利潤が思い浮かぶ。なぜなら、高い利益を残すことは将来的に企業が生き残るための条件だと言えるからである。

それでは、利潤だけを追求していれば企業のパフォーマンスは向上するのだろうか。利潤第一で自社製品やサービスを改善しようとしても社会の中では受け容れられない。真の意味での企業のパフォーマンスとは、利潤を追求することよりも、製品やサービスを購入する顧客を創造し、満足させることである。企業は時代とともに変化する顧客のニーズに対して、「柔軟」かつ「迅速」に適応し、満足させ続けることが求められると私は考える。

その点では、中小企業の方が大企業よりも力を発揮しやすいだろう。なぜなら、企業の規模が小さい分、周囲の様々な変化にも影響されやすいが、その変化を察知して臨機応変にアクションを起こしやすいと考えられるからである。また、取引先として企業を顧客に持つ中小企業やグループ会社は専門性の高い分野に特化していることが多く、その分野に注力できることも強みの一つと言える。当社も、自動二輪車や船外機などを製造するメーカーのシステムを扱うグループ会社である。当社の親会社は「感動創造企業」という企業目的を掲げている。したがって、当社の役割は顧客である親企業の製品が、その先にいる世界中のエンドユーザーの心を掴み続けるために、システム面でサポートすることだと言える。

しかし、サポートするだけという認識では不十分だと私は考える。そこで、当社のように企業を顧客に持つ中小企業・グループ会社の使命について、私の学生時代の経験から考察していこうと思う。

私は学生時代を通してスポーツとの関わりが深かった。大学の所属学部では運動生理学を専攻し、部活動として陸上競技部で長距離走に打ち込んだ。学生時代に学んだ学問的な知識と、実際の運動経験を通して、ヒトがいかにしてスポーツにおけるパフォーマンスを向上させているのかを考え、体感してきた。特に、陸上の長距離走は中学から大学まで10年間続け、その中で多くのことを学んだ。長距離走のパフォーマンスを高める要素として私が最も重要視したことは、走るときにいかにムダを無くして、力を地面に効率良く伝えるか、ということだった。一生懸命腕を振っても、力強く地面を蹴っても、それらのカラダの動きがバラバラでは思うような走りはできず、優れたパフォーマンスを発揮できない。長い距離を走るうえでは、「走る」という全体的な一つの目的に対して、各部位の動きが調和を保っていることが求められる。このことを頭で考え、動きの中で実践することを通して、私は大学において大きく記録を伸ばすことができた。

中小企業・グループ会社とその顧客である企業とを含んだ一つの組織にも同様のことが言えると私は考える。グループ会社を含む中小企業は、組織全体で共有する目的に向かって、各々の専門分野で力を発揮する必要がある。専門性を高めるだけでは組織全体としての大きな目的は達成されないばかりか、そのパフォーマンスを衰退させる恐れさえある。顧客である企業とそれを支える中小企業が一つのカラダとして調和が保たれていることが、組織全体のパフォーマンス向上のために重要となる。中小企業は、この調和を高めるために顧客である企業が何を期待しているか、という「顧客視点」を持つ必要がある。顧客視点を持ったうえで柔軟かつ迅速な適応力が発揮できれば、顧客の期待を超え、その企業の競争力を高めることができる。その結果、エンドユーザーのニーズを満たし、企業のパフォーマンス向上に貢献できると考える。

当社は、「世界トップレベルのチーム力で顧客の期待を超える」ことをビジョンの中で示している。グループ会社にとって、グループ全体を一つのチームとして捉えることは難しいだろう。しかし、顧客視点に基づいた調和を忘れずに、所属する部署やグループといった小さなチームの中で成長することが求められると感じている。この期待に応え、感動創造企業の一員としてグループ全体のパフォーマンス向上に貢献すべく、全力で走り続けていきたい。

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