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これまでの受賞者

2020年度 第1席受賞

『主体性から創出する自己評価』
ヤマハモーターソリューション株式会社 坂 領祐(ばん・りょうすけ)

「あなたはどんな人間ですか」就職活動でこの質問が出ない会社は存在しないだろう。必ずしも、すべての人間が自分自身を理解できているとは言えない。私も自己評価ができていなかった人間の一人であった。しかし、そんな私を救った友人の言葉を今でも覚えている。その言葉は以下である。「自分を信じるな。自分を信じてくれた人を信じろ。」この言葉は、自分の評価を決めるのは常に周囲の人間であり、自己評価を可視化するためには他者の協力が必要不可欠であることを表している。では、如何にして自己評価を高めてくれる協力者を得れば良いのだろうか。

経団連が行った新卒採用に関するアンケートによると、企業が選考にあたって特に重視する点の第一位は、コミュニケーション能力、第二位は主体性であった。私は、この二つの中でも特に主体性が大切であると考えている。なぜその様な考えに至ったのか、なぜコミュニケーションと主体性を企業が重要視しているのか。私は、新人研修として行われた一ヶ月間の工場実習で学ぶことができた。

新型コロナウイルスの影響で実習期間の多くは、ラインが止まっており、私はライン周りの掃除をしていた。しかし、私は普段工場の方が掃除する箇所だけの掃除では意味がないと考え、普段時間がなくて掃除できていない場所はないか伺い、その場所の掃除を行った。すると、不思議なことに、工場実習の配属ラインで働いていただけでは話す機会が無い他のラインの方にも「ありがとう」「自分から動ける人だね」と声を掛けられるようになった。そして、工場の方々にかけていただいた言葉から、私という人間は主体性があり、周囲から話かけ易い人間に成長できたことを実感した。この経験から、主体性を持った行動により、コミュニケーションは創出できるのではないかと考えた。この時、工場実習が始まった際に工場長から伺った「新人一年目は周囲の人が面倒だと避けていることを積極的に引き受けるべき」という話を思い出した。この話を伺った当時、話の意味が理解できていなかった。しかし、工場実習の経験から、主体的に動くことで話し易い人間関係を作りだすことができると知り、この言葉の意味が理解できた。つまり、自己評価を高めてくれる協力者を得る以前に、コミュニケーションが発生しうる人間関係を築くためにも、主体性を持った行動が重要である。

コミュニケーション能力は、会社にとって重要な役割を持っている。チームで働き、一人の仕事以上の成果を成し遂げるためには、チーム力向上を図り、コミュニケーションを通して信頼関係を構築する必要がある。また、会社の経営計画を達成するためにも、各部門の目標を計画通り達成することが重要となる。この部門目標達成のためには、上司への報告、連絡、相談など縦のコミュニケーションも大切であることは、新人研修を通してどの企業の新入社員も感じていることであろう。ただ、コミュニケーション能力とは、相手に話しかけることだけではなく、相手が話しかけ易い人間関係の構築も意味しているのではないか。つまり、新型コロナウイルスの影響で入社式や飲み会の中止が相次ぎ、例年に比べ、社内の交流の機会が少ない今年の新入社員は、コミュニケーションが成立する人間関係の構築を最優先に行わなくてはならない。そこで、私は自ら仕事を引き受け、周囲の人からの信用を得られる人間に成長すべきと考えた。そして、周囲の人との人間関係を構築し、コミュニケーションを通して、初めて相手から見た自分の評価を聞くことができるのではないだろうか。その上で、自己評価を確認し、自分はどういった長所を持った人間なのか、その長所を活かすための次の行動について考えるべきと私は考える。

自己評価を可視化するためには、周囲の人間の協力が必要不可欠である。今年の新入社員は社内交流が少なく、自己評価を高めてくれる人間関係の構築が難しい。そのため、私は周囲の人間が話しかけ易い社員になる必要がある。その上で、周囲の人間との交流を経て、他者からみた自分の評価を集め、自己評価の向上に取り組んでいかなくてはならない。加えて、自己評価を理解した上で、今後の自分の成長に繋げられる経験を増やすためのコミュニケーション能力を磨いていきたい。「自分を信じるな。自分を信じてくれた人を信じろ。」この言葉は、主体性で他者を味方につけ、互いに自己評価を高め合い、チームの成長に繋げていくことも示していると私は新人研修を通して理解した。今後もこの言葉を胸に抱いて、今自分に何ができるのか考え、行動する主体性を仕事の中で発揮していきたい。そして、主体性に加えてコミュニケーション能力を磨き、チーム全体の成長に貢献できる社会人に成長していこうと思う。そのためにも、主体性を意識しながら行動し、自己評価を高められる一年にしていきたい。

参考文献
2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果
URL https://www.keidanren.or.jp/policy/2018/110.pdf
2020年7月17日閲覧

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