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これまでの受賞者

2019年度 努力賞受賞

『体育会系社員に求められる客観性』
ヤマハモーターソリューション株式会社 加賀 将斗(かが まさと)

私は中学から大学の10年間、バレーボール部に所属していた。所謂、体育会系の一員で、体育会系での経験を活かして就職活動や新人研修に取り組むことができている。そのため、私は体育会系に対して好印象を抱いている。しかし、近年の新入社員は体育会系の企業への印象が良くない。今の新入社員は、職場に対して「アットホーム」であることや、「互いに個性が尊重される」ことを求めている。一方で、体育会系の企業は、先述のことが整っていないというイメージがあり、「体育会系=ブラック」とまで捉えられがちである。体育会系とは部活動やスポーツ界で育まれる気質で、厳格な上下関係や、根性・精神論、体力の重視などが特徴的である。組織の中で厳しさや理不尽さが見られることがあり、現代の社会のニーズに合わず敬遠されがちである。今後、体育会系という気質は淘汰されるべきものであるのだろうか。

ここまで、体育会系のマイナス面を挙げたが、プラス面も存在する。例を挙げるならば、上下関係を大切にすることや、チームワークに優れていること、勝負や競争に対するストイックさなどがあり、これは会社に大きく貢献できる能力だ。私の実体験を例に挙げ説明していきたいと思う。

弊社では、IT企業にもかかわらず、二か月間工場で働く実習研修がある。新しい環境と、経験のない肉体労働から決して楽ではない研修の中で、私は「上下関係」と「競争心」を意識して乗り越えることができた。一つ目に、上下関係においてそれぞれの立場を明確にすることで、責任と信頼のある関係を築くことができる。工場の先輩社員は、私を短い期間の中で一人前に育てるために責任をもって指導してくれた。後輩の私にとってそのような存在はとても頼りになる存在であり、感謝や尊敬の念が絶えなかった。また先輩に対して、礼儀を欠かさず、意欲的に動くことで先輩からの私に対する印象が良くなった。これらの取り組みによって、私は二か月という短い期間で、先輩社員と責任と信頼で結ばれた親密な関係を築いた。二つ目に、競争心を持つことで成長率が向上する。スポーツでは常に他者と競い合うため、競争心が育まれる。私の作業では、サイクルタイムと呼ばれる、一つの製品を作る際にかかる時間を短縮することや、不良品の数など実際に目に見える数字として表れる結果が存在した。この結果に対して、同期に負けないよう競争心をもって取り組むことで、自身の成長を常に意識して作業に取り組んだ。また、私が競争心をもって作業することに同期も感化され、お互いに競い合う形で互いに切磋琢磨する環境が形成された。この取り組みで作業効率の向上や、不良を出さないことに大きく効果を成し、より成長することができた。

体育会系の新入社員である私は明確な上下関係や競争心をもって成長することができ、体育会系は大きな強みを有していると考える。このプラス面がありながら、体育会系に対してマイナスイメージが強いのはなぜか。

体育会系には理不尽な根性論や精神論、服従的な関係などの思考・環境を持つ組織がある。それらが悪印象を生じることに影響していると考える。こういったことを正しいと思ってしまう人は、自分が経験してきた思考や環境を尺度に、物事を考え判断してしまう。言わば、自己中心的な考え方をしているのだ。実際にパワハラは他者の視点を考慮せず、自身の感情や判断を突き通してしまうために起こってしまう。

そこで、体育会系の社員は、自分の思考や行動に対して客観的に見つめ直し、視点を広げる必要があると考えられる。例えば、昔のスポーツにおける考えに、根性を鍛えるため練習中に水を飲まないというものがあった。根性を鍛えることはできるだろうが、医学的な視点で見ると命の危険につながることであり、誤った教えである。これは自分が経験したからという盲目的な一つの視点で判断したため、不条理な考えになってしまっている。このようなことに対して、多角的な視点から客観的に考えることで、体育会系の理不尽さや自己中心的な考え方を解消できる。そうすることで体育会系のマイナス面を無くし、体育会系の良さを活かした優秀な人材を体現することができる。また、最近の新入社員の特徴として、「主体性」や「競争性」、「ストレス耐性」が低下していると言われている。客観性を持った体育会系の新入社員は現代の社会に適応したうえで、近年の状況を打破する人材になっていくことができると私は思う。

体育会系は、昔の日本で一時代を築いたほどにパワーのある存在だ。自身の良さを十分に活かすことができれば、企業に与える良い影響は多い。体育会系の社員全体が客観性を持つことで、体育会系の印象を良い方向へ変えるとともに、企業や社会を支えていくことができると考える。

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