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これまでの受賞者

2009年度 努力賞受賞

『伝える力から生まれる感動』
エンジニアリング部 高塚 麻莉

「結局、一番伝えたいことが伝わってこなかった。」これは、社会人になって学んだことをプレゼンテーション形式で発表したときに上司から言われた言葉だ。

私は大学時代、理系の研究室に所属していた。そのためプレゼンテーションとは、研究の結果を数値などで視覚化してわかりやすく表し、予想と結果に誤差が生じた場合は原因を考察し、誤差を無くすために次回の研究計画を報告するものという認識があった。研究は客観的に評価しなければならないため、自分の想いを伝えるのではなく、数値として研究が妥当かどうか客観的な結果を伝えてきた。

しかし、入社一ヵ月後に行ったプレゼンテーションでは、内容をまとめきれずにテーマがはっきりとしなかった。そして、翌月の研修で学んだことについての報告会でも、伝えたい情報を絞りきることができず、聴く人のために内容を明確にすることができなかった。そのため、聞き手が理解しづらい内容となってしまった。研修で学んだことは、研究と違って結果を数値化することは難しい。よって、今回の報告会では伝えたいことを自分の言葉でまとめることがとても重要となっていたのだ。

企業では、利益を生むために結果を出さなければならない。提示案がどれだけ会社に利益をもたらすか、利点を客観的にアピールすることが大切である。しかし、ここで差が出てくるのがアピールの仕方である。たとえば、ある数式を解けという問題が出された場合、別解でも無い限り、十人中十人の人間が同じ解法で解くだろう。しかし、解き方をプレゼンテーション形式で発表せよとなった場合、基本的な公式から説明する人もいれば、解法を簡潔に伝える者もいる。十人全員が同じ発表方法をとるとは限らない。そして、伝える内容自体は同じにも関わらず、発表方法によって、聴く側の人間は「この解法を採用したい。」や「もっと他にいい解法があるはずだ。」と意見が分かれてくる。このように、プレゼンテーションとは結果よりも伝え方が重要になるのだ。

次に、どのように伝えるかという課題がある。自分が一番言いたいことを伝えればよいのだが、ただ伝えるだけでは聴く側は納得できない。どうすれば自分の想いを理解していただけるか、聴く人の気持ちを考えた伝え方が必要となる。プレゼンテーションだけでなく、業務全般において相手を想った行動が必要となってくる。

弊社はヤマハ発動機グループの一企業として「感動創造企業」という言葉を掲げている。そのため、常にお客様を意識した行動の心がけが必要である。感動とは新明解国語辞典によれば、「ある物事に深い感銘と受けて強く心を動かされること。」とある。しかし私は、「心だけで感じるのでなく、行動にも繋がるもの」と捉えたい。私のプレゼンテーションに対して、お客様に行動していただく。さらに、お客様の行動によって私も新たな行動に移ることで、私とお客様の間に相乗効果する仕事を行っていきたい。そのためには、自分の言いたいことを相手に明確に伝え、さらに聞き手に「聴きたい」と思っていただけるようなプレゼンテーションを行う必要がある。

自分の考えを明確に伝えるには、一番伝えたいことを終着点として考える必要がある。終着点から話をさかのぼっていくことで情報量が多くても芯の通った内容になる。そのため、聴く側にとっても一番言いたいことがわかりやすくなる。また、具体的なエピソードを付け加えることで聞き手に臨場感を与え、「もっと聴きたい」と思っていただける内容となるだろう。

次に、自分の考えを納得していただくには、聞き手の論理性と納得性を考慮して、コミュニケーションをとる必要がある。論理性では、ロジカルな思考に基づき考えを伝えることで、相手に理解していただくことができる。こちらは、大学時代のプレゼンテーション法が役に立つだろう。一方、納得性では聞き手の気持ちにうったえかけることで、自身のメッセージに共感していただくことができる。納得性は倫理観に繋がっており、宗教、風土、文化によってその人の倫理観には違いが出る。弊社は日本だけでなく、中国やインドとの交流がある。そのため、世界という視点で自身の伝えたいことが相手の納得性に適っているか検討が必要となる。

これら二点を元に、プレゼンテーションを行うためには、自分の考えを「プレゼントする」という意識を心がけたい。また、報告する機会だけでなく、日々の業務の中でこそ社内のメンバーへの思いやりを心がけることで、チームに新たな感動を生み出す原動力となるよう、成長したい。

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